疲労骨折をくり返さない食事:背が伸びる時期・練習が増える時期に、骨とエネルギーを満たす食べ方

「チームでうちの子だけ疲労骨折。食事が足りなかったの?」「治って復帰したら、また別の場所を疲労骨折……」
知恵袋には、ジュニアサッカーの保護者から「入部してすぐに膝が痛くなり、疲労骨折と言われた。ほかの子はなっていない。練習のしすぎか栄養不足か、食事を見直している」という質問があります。小6のサッカー少年の保護者からは「恥骨の疲労骨折で2か月運動禁止、復帰したら今度は坐骨の疲労骨折で3か月。休んでいる間に体重が3.5kg増えた。成長のためにしっかり食べさせていいのか」という相談も寄せられています。
疲労骨折は、1回の強い衝撃ではなく、くり返しの負担で骨に小さな傷がたまって起きるけがです。この記事では、なぜ成長期のサッカー選手に起きやすいのかを出典で確かめ、骨の材料とエネルギーを毎日の食事で満たす方法を、食品の量と献立でまとめます。練習を休んでいる時期の食事はけがや矯正で練習を休む時期の食事にくわしく書いています。
疲労骨折は「修理が追いつかない」ときに起きる
秋田県スポーツ科学センターのスポーツ栄養のコラムは、しくみをこう説明しています。スポーツ選手は練習で毎日体に小さなダメージを受け、それが練習後や睡眠中に修復される。エネルギーが足りないと修復が間に合わないまま翌日の練習を迎え、損傷がたまって、ある日「疲労骨折」や「肉離れ」という大きな故障になる。
同じコラムは、サッカーを自転車や水泳と並ぶ持久系の競技として挙げ、本人が気づかないうちにエネルギー不足になりやすいとしています。長い練習で食事の時間がとれなかったり、食欲が落ちたりするためです。

骨は毎日こわれて、毎日つくり直されています。食事は、その工事の材料と、工事をする人のお給料。どちらが足りなくても、修理が遅れます。
起きやすい3つの時期
秋田県のコラムは、成長期の選手がエネルギー不足になりやすい時期として、次の3つを挙げています。
| 時期 | 家庭で気づくきっかけ |
|---|---|
| 身長が急に伸びる時期 | ズボンの丈が急に短くなる、靴のサイズが続けて上がる |
| 体重(筋肉量)が増える時期 | 体つきががっしりしてくる |
| 練習時間が長くなり、強化される時期 | 入部・進級・選抜チーム・大会前 |
(秋田県スポーツ科学センター「スポーツ選手とエネルギー不足」)
思春期の競技者の疲労骨折についての総説(Beck・Drysdale、2021年)も、同じ方向のことを書いています。
- 子どもの骨の密度は、身長が急に伸びる時期に一時的に下がる
- 身長がいちばん伸びる年齢の平均は、女子で約12歳、男子で約13歳
- 疲労骨折の前にいちばん多いのは、練習の変化(種類・強度・グラウンド・シューズ)
- サッカーのけりやダッシュ、切り返しは、骨盤・仙骨の疲労骨折と結びつく動きとして挙げられている。恥骨のあたりの骨のストレス反応は、思春期から大人のサッカー選手によく見られる
知恵袋の「入部してすぐ」「復帰してすぐ」は、まさに練習が変わった時期です。背が伸びる時期と練習が増える時期が重なったら、食べる量をいつもより増やすタイミングと考えましょう。
エネルギー:主食をしっかり、補食を足す
秋田県のコラムは、成長期は「練習で使う分」+「生きていく分」+「身長を伸ばす分」まで食べる量を増やす必要がある、としています。予防のための食べ方として挙げているのは、次の3つです。
- 主食を増やす:ごはん・パン・麺の炭水化物は、運動のときに優先して使われるエネルギー源
- 全体の食事量を増やす:汁物や生野菜だけでお腹がいっぱいにならないように。少しの量でエネルギーが高い油も上手に使う
- 補食を加える:一度に食べられる量には限りがあるので、朝・昼・夕の3回に、練習の前や後の補食を足して回数を増やす
ごはんの量で見ると、こうなります。
| ごはん | エネルギー | 炭水化物 |
|---|---|---|
| 茶わん1杯(150g) | 234kcal | 55.7g |
| どんぶり1杯(250g) | 390kcal | 92.8g |
| おにぎり1個(100g) | 156kcal | 37.1g |
(日本食品標準成分表 01088 精白米ごはんから計算)
夕食のごはんを茶わん1杯からどんぶり1杯にすると、それだけで156kcal上乗せです。練習のある日は、練習前におにぎり1個を足すと、夕食までのすき間がうまります。補食の選び方は練習前の補食にまとめています。
骨の材料:カルシウムは成長期にいちばん多く必要
日本人の食事摂取基準(2025年版)のカルシウムの推奨量です。
| 年齢 | 男子(mg/日) | 女子(mg/日) |
|---|---|---|
| 10〜11歳 | 700 | 750 |
| 12〜14歳 | 1000 | 800 |
| 15〜17歳 | 800 | 650 |
(推奨量。出典:日本人の食事摂取基準2025 p283)
12〜14歳の男子は1日1000mgで、一生のうちでいちばん多い量です。ちょうど身長がいちばん伸びる年ごろ(男子で約13歳)と重なります。Beck・Drysdaleの総説も、思春期のカルシウムは食べ物からとることをすすめています。
カルシウムが多い食品を、1回に食べる量で見てみましょう。
| 食品(1回量) | カルシウム | たんぱく質 |
|---|---|---|
| 牛乳 コップ1杯(200g) | 220mg | 6.6g |
| プロセスチーズ 1枚(20g) | 126mg | 4.5g |
| ヨーグルト(無糖)1カップ(100g) | 120mg | 3.6g |
| こまつな(生)小鉢1杯分(70g) | 119mg | 1.1g |
| 木綿豆腐 1/3丁(100g) | 93mg | 7.0g |
| 納豆 1パック(40g) | 36mg | 6.6g |
| しらす干し 大さじ2(10g) | 28mg | 2.5g |
(日本食品標準成分表 13003・13040・13025・06086・04032・04046・10055 から計算)
牛乳
チーズ
ヨーグルト
こまつな
木綿豆腐
しらす干し
ビタミンD:鮭1切れで1日分をこえる
ビタミンDは、食べたカルシウムを体に取りこむのを助けます。1日の目安量は10〜11歳で8.0μg、12〜14歳で9.0μgです(食事摂取基準2025 p182)。
| 食品(1回量) | ビタミンD |
|---|---|
| しろさけ 1切れ(80g) | 25.6μg |
| 卵 1個(50g) | 1.9μg |
| しらす干し 大さじ2(10g) | 1.2μg |
| 牛乳 コップ1杯(200g) | 0.6μg |
(日本食品標準成分表 10134・12004・10055・13003 から計算)
鮭は1切れで目安量の2倍以上。週に何回か鮭の日をつくり、ほかの日は卵としらすで足していきます。Beck・Drysdaleの総説は、アメリカ海兵隊の新兵(16〜21歳)の研究で、カルシウムとビタミンDの効果がはっきり出たのは夏だけで、日光がビタミンDの大きな供給源だと考えられる、と紹介しています。外で練習するサッカーは、日光の面でも骨の味方です。
鮭
卵
納豆

牛乳・チーズ・小魚・豆腐・青菜でカルシウム、鮭と卵でビタミンD。骨の材料は、ふつうの和食でそろいます!
12〜14歳の男子で、1日1000mgをとる献立の例
練習のある平日の1日です。
| 食事 | 献立 | カルシウム |
|---|---|---|
| 朝 | ごはん200g・納豆1パック・卵焼き(卵1個)・牛乳200g | 285mg |
| 昼(給食) | 給食の牛乳200g(ほかのおかずは数えない) | 220mg |
| 練習前の補食 | しらすおにぎり(ごはん100g・しらす10g)・チーズ1枚 | 157mg |
| 夕 | ごはん250g・焼き鮭1切れ・豆腐とわかめのみそ汁(豆腐100g)・こまつなのおひたし70g・ヨーグルト100g | 351mg |
| 合計 | 約1,010mg |
(日本食品標準成分表 01088・04046・12004・13003・10055・13040・10134・04032・06086・13025 から計算。給食は牛乳だけ、みそ汁はわかめとみその分を数えず、豆腐で計算した)
この1日で、ビタミンDは鮭・卵・しらす・牛乳で約30μgになり、目安量の9.0μgを大きくこえます。ごはんは合計550gで858kcal。主食・主菜・カルシウムのもとが毎食そろう形です。
給食のない休日は、昼に牛乳1杯を足すか、チーズトーストやしらすのせうどんにすると、同じくらいになります。
骨づくりの毎日の小さな工夫
- 冷蔵庫に牛乳・チーズ・ヨーグルトを切らさない:補食や朝食にすぐ出せる
- しらすをご飯のお供に:おにぎり、卵焼き、チャーハンに混ぜるだけ
- みそ汁は豆腐とこまつなで:1杯でカルシウムが足せる
- 鮭は焼いてほぐして冷凍:おにぎり、お弁当、混ぜごはんにすぐ使える
- 寝る時間を決める:骨の修復は寝ている間に進む。日本サッカー協会のガイドラインでは、育成年代の睡眠時間は9時間以上が目安です
骨と一緒にとりたいビタミンKやたんぱく質の話は骨はカルシウムだけでは育たないをどうぞ。
よくある質問
Q. 休んでいる間に体重が増えました。ごはんの量はどうする?
秋田県のコラムは、成長期の選手は身長の伸びとともに体重がゆるやかに増える状態がひとつの理想としています。休んでいる間の体重の増加は、骨や筋肉の工事が進んでいる証拠でもあります。主食はいつもどおりに食べて、体重は毎週同じ条件(朝起きてトイレのあと、など)で量り、身長とあわせて流れで見ていきましょう。体重の見方は体重計の数字の読み方にまとめています。
Q. 牛乳が苦手です
チーズ・ヨーグルト・豆腐・こまつな・しらすで、同じ量を組み立てられます。くわしくは牛乳が嫌いな子も安心!牛乳以外でカルシウムをとる方法をどうぞ。
Q. 練習量はどう決める?
練習量は家庭で決めず、指導者と相談して決めましょう。秋田県のコラムも、練習量は自分で判断せず、必ず指導者に相談するよう書いています。家庭の役割は、練習が増える時期に食べる量を先に増やしておくことです。
Q. 復帰したら何を気をつける?
復帰の直後は、練習が急に変わる時期です。総説が挙げる「練習の変化」がまた起きるタイミングなので、補食を1回足し、ごはんの量も練習の日の量に戻します。
子どもへの声かけ
- 「背がぐんぐん伸びてるね。骨も工事中だから、ごはんもう少しいこう!」
- 「牛乳とチーズ、どっちにする? 骨の材料を選ぼう」
- 「今日は鮭の日。これ1切れで、骨のビタミンが1日分以上だよ」
- 「早く寝た日は、骨がしっかり直る日だよ」

しっかり食べて、しっかり眠る。それが、また思いきりボールをけれる体への近道です!
まとめ
- 疲労骨折は、練習の小さな傷の修理が追いつかないときに起きる。エネルギーが足りないと修理が遅れる
- 起きやすいのは、背が急に伸びる時期・体重が増える時期・練習が増える時期。重なったら食べる量を増やすタイミング
- 主食をしっかり、補食で回数を増やす。どんぶり1杯で茶わん1杯より156kcal多い
- カルシウムは12〜14歳の男子で1日1000mg。牛乳・チーズ・ヨーグルト・豆腐・青菜・しらすで、1日約1,010mgの献立が組める
- ビタミンDは鮭1切れで25.6μg。外での練習の日光も味方
- 睡眠は9時間以上。体重は身長とあわせてゆるやかに増える流れで見る
骨を育てる料理はレシピ一覧から探せます。エネルギー不足のサインは食べる量が足りないとどうなる?でくわしく紹介しています。
出典
- 秋田県スポーツ科学センター スポーツ栄養指導委員会「スポーツコラム 令和7年度第6号 スポーツ選手とエネルギー不足」https://common3.pref.akita.lg.jp/aiss/science/r7columm6.pdf
- Beck B, Drysdale L. Risk Factors, Diagnosis and Management of Bone Stress Injuries in Adolescent Athletes: A Narrative Review. Sports (Basel) 2021;9(4):52. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8073721/ (思春期の競技者の疲労骨折についての総説)
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」カルシウム p283・ビタミンD p182
- :日本サッカー協会のガイドライン(育成年代の睡眠時間9時間以上)
- 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」、日本サッカー協会「JFA栄養ガイドライン」、文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」(出典の一覧は「出典」のページを参照)
