運動神経は遺伝? 子どもの運動神経はいつまで伸びる?

「うちは親が運動苦手だから、子どもも運動神経が悪いのかな」「運動神経って、何歳までに決まるの?」。保護者どうしで、よく出る話題ですね。
この記事では、運動神経は遺伝なのか、そして子どもの運動神経はいつまで伸びるのかを、双子の研究と、練習の効果を調べた研究から、わかっていることだけをお伝えします。
先に答えを言います。運動の力には、遺伝の影響があります。でも、運動の技術は、練習すれば伸びます。 生まれつきで決まって終わり、ではありません。サカメシ!のリフティング記録でお伝えしているとおり、年長(5〜6歳)以降なら、毎日やれば、だれでもできるようになります。
「運動神経」ってそもそも何?
ふだん「運動神経がいい」と言うとき、私たちはいくつかのことをまとめて呼んでいます。
| ふだんの言い方 | 研究での呼び方の例 |
|---|---|
| 足が速い | 走るスピード |
| ジャンプ力がある | 瞬発力 |
| 体の使い方がうまい | バランス・協調性 |
| ボールの扱いがうまい | 基本的な運動スキル(投げる・蹴る・捕る) |
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研究では、こうした力を1つずつ測って調べています。「運動神経」という1つのものがあるわけではなく、いろいろな力の集まりです。そして、そのうちボールを蹴る・投げる・捕るといった技術は、練習でぐんぐん伸びる部分です。
双子の研究でわかったこと
遺伝の影響を調べるときによく使われるのが、双子の研究です。遺伝子がほぼ同じ一卵性の双子と、ふつうのきょうだいと同じくらい似ている二卵性の双子を比べて、遺伝と環境がそれぞれどのくらい関わっているかを見積もります。
10歳の双子の体力
10歳の双子105組とその親を調べた研究があります(Maes ほか 1996)。筋力・瞬発力・走るスピード・バランスなどを測ったところ、運動にかかわる体力は、中くらいから高い程度に遺伝の影響を受けていたと報告されています。いっぽうで、走るスピードと体の柔らかさには、家庭の環境(きょうだいが共有する環境)の影響もはっきり見られました。
赤ちゃんのころの運動の発達
オランダの双子の登録データで、2万組をこえる双子を調べた研究もあります(Zi ほか 2024)。お座りや歩き始めなど、赤ちゃんのころの運動の発達について、遺伝の影響が43〜65%、家庭の環境の影響が16〜48%と見積もられました。
同じ研究では、7歳のころのスポーツの活動量には、家庭の環境の影響が大きいことも示されています(男子68%・女子80%)。小さいうちに、どれだけ体を動かすかは、家庭の環境に大きく左右されるということです。
研究の読み方
| わかっていること | 注意したいこと |
|---|---|
| 体力や運動の発達には、遺伝の影響がある | 遺伝の割合は、集団の中の「ばらつき」の説明。1人の子の将来を決める数字ではない |
| 家庭の環境の影響もある | 研究ごとに、測ったものも数字もちがう |
| 環境は、子ども時代に特に大きい | 遺伝と環境の割合は、年齢によって変わる |
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遺伝の割合は研究によってばらつきがあり、まだ決まった答えはありません。それでも、遺伝だけで決まるわけではないことは、どの研究からも読みとれます。

遺伝の割合は「クラスみんなの差のうち、どれくらいを遺伝で説明できるか」という数字。わが子1人の伸びしろを決める数字ではありません!
練習すれば、運動の技術は伸びる
ここからが大事なところです。
練習の効果を調べた研究
子どもに運動の技術(走る・跳ぶ・投げる・蹴る・捕るなど)を教えるプログラムの効果をまとめた研究があります(Logan ほか 2012)。この研究では
- プログラムを受けた子は、運動の技術がはっきり伸びた
- 自由に遊ぶだけのグループでは、伸びははっきりしなかった
と報告されています。著者たちは、基本的な運動の技術は、成長すれば自然に身につくものではなく、学んで、練習して、身につけるものだとまとめています。
学校や地域で行われた運動のプログラムをまとめた別の研究(Morgan ほか 2013)でも、体全体の運動の技術や、走る・跳ぶといった技術に、大きな改善が見られています。
上手になると、もっと動きたくなる
運動の技術が高い子は、体をよく動かし、体力も高い傾向があることも、研究のまとめで示されています(Robinson ほか 2015)。できるようになる → 楽しくなる → もっと動く → さらにうまくなる。このよい流れをつくるのが、毎日の練習です。
子どもの運動神経はいつまで伸びる?
「〇歳までに決まる」という話をよく聞きます。でも、運動の技術が何歳で伸びなくなる、という区切りを示した確かな研究は見つかりませんでした。
練習の効果を調べた研究は、幼児や小学生を中心に、さまざまな年齢で行われていて、どの年代でも、練習すれば技術は伸びています(Logan ほか 2012・Morgan ほか 2013)。
文部科学省の幼児期運動指針は、幼児期は基本的な動きを身につけやすい時期で、くり返すことで動きが上手になっていく、としています。小さいうちから体を動かすことは大切です。そのうえで、今から始めても遅くありません。 小学生も、中学生も、やれば伸びます。
「ゴールデンエイジ」の話が気になる方は、ゴールデンエイジは本当?を見てください。
@lifting: 年長さん以降なら、毎日やれば、だれでもできるようになる。差がつくのは、才能より「やったかどうか」です!
リフティングで考えてみる
サカメシ!の考えは、リフティング記録と同じです。
- 年長(5〜6歳)以降なら、毎日やれば、だれでもできるようになる
- できる子とできない子の差は、やるか、やらないか
- 比べる相手は、ほかの子ではなく昨日の自分
100回できる子は、それだけの日数ボールにさわってきた子です。親が運動が得意かどうかは関係ありません。くわしくは小学生のリフティング、平均は何回?で紹介しています。
家でできる「伸ばす」工夫
| 工夫 | ポイント |
|---|---|
| 毎日少しでもボールにさわる | 5分でも、毎日のほうが身につく |
| いろいろな遊びをする | 鬼ごっこ・ボール投げ・なわとびなど |
| 外で遊ぶ時間をつくる | 休みの日は公園へ |
| 記録をつける | 自己ベストが伸びると、やる気が続く |
| よく食べて、よく眠る | 体を動かす元気のもと |
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文部科学省の幼児期運動指針は、特定のスポーツだけを続けるより、さまざまな遊びのほうが多様な動きを含むとしています。サッカー以外の遊びも、運動の土台づくりに役立ちます。遊びの例は運動神経をよくする遊び・練習で紹介しています。
体を動かす元気は、ごはんから
練習を毎日続けるには、エネルギーが必要です。主食をしっかり食べて、練習のあとは補食をとりましょう。睡眠も大切で、厚生労働省の睡眠ガイド2023では、小学生は9〜12時間、中学・高校生は8〜10時間が目安です。
ごはん
卵
バナナ
牛乳
遺伝の割合を、どう受けとめればいい?
「遺伝の影響が50%」と聞くと、「半分は生まれつきで決まっている」と感じるかもしれません。でも、これは少しちがいます。
双子の研究で出てくる遺伝の割合は、調べた集団の中で、一人ひとりの差(ばらつき)のうち、どれくらいを遺伝で説明できるかという数字です。ある子の力の半分が遺伝でできている、という意味ではありません。
さらに、Zi ほか 2024 では、スポーツの活動量に対する遺伝と家庭の環境の割合が、7歳と14歳で大きく変わっていました。割合は、年齢や暮らしの環境によって変わるのです。
| よくある受けとめ方 | 実際の意味 |
|---|---|
| 遺伝50% = 力の半分は生まれつき | 集団の中の差のうち、半分ほどを遺伝で説明できる |
| 遺伝の割合が高い = 練習しても変わらない | 練習で伸びるかどうかは、別の研究(練習の効果の研究)で調べる |
| 一度出た割合はずっと同じ | 年齢や環境で変わる |
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そして、練習の効果を調べた研究では、練習した子の技術ははっきり伸びています(Logan ほか 2012・Morgan ほか 2013)。遺伝の影響があることと、練習で伸びることは、両方とも本当です。
毎日続けるための、家庭の小さなルール
| ルール | 例 |
|---|---|
| 時間を決める | 夕食の前に5分、リフティング |
| 場所を決める | 玄関の前、ベランダ、近くの公園 |
| 記録を見える場所に | カレンダーやアプリにスタンプ |
| 親は数える係 | 回数を一緒に数えると、子どもはがんばれる |
| できなかった日も責めない | 次の日にまたやればOK |
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よくある質問
Q. 親が運動が苦手です。子どもも苦手になりますか?
遺伝の影響はありますが、それで決まるわけではありません。家庭の環境の影響も、研究で示されています。親が苦手でも、子どもと一緒に公園で遊ぶ時間をつくれば、それが立派な「環境」です。
Q. 足の速さは遺伝ですか?
走るスピードにも遺伝の影響があると報告されています。ただし、同じ研究で、家庭の環境の影響も見られています(Maes ほか 1996)。走り方の練習や、たくさん走って遊ぶ経験で、速くなる部分もあります。
Q. 小学校高学年からサッカーを始めても間に合いますか?
間に合います。練習で技術が伸びることは、さまざまな年齢の研究で示されています。始めた日から、毎日ボールにさわりましょう。
Q. 兄弟で運動の得意・不得意がちがいます
同じ家庭でも、遺伝子の組み合わせも、経験してきた遊びもちがいます。それぞれのペースで、自己ベストを伸ばしていけば大丈夫です。
Q. 運動が苦手な子に、どう練習させればいい?
できる課題から始めるのがコツです。リフティングなら、ワンバウンドをはさんでもOKにするなど、できた!を毎日つくりましょう。サカメシ!のリフティング記録は、段階を分けてスタンプを押せるようにしています。
Q. 体が小さいのは不利ですか?
成長の時期は一人ひとりちがいます。今は体をつくる時期です。しっかり食べて、よく眠りながら、技術を磨いていきましょう。食事の量は小学生・中学生サッカー選手の食事の量で紹介しています。
Q. 運動神経がいい子は、勉強もできる?
この記事で紹介した研究は、運動の力と体の健康の関係を調べたものです。勉強との関係は、ここでは扱っていません。運動は、それだけで子どもの毎日を楽しくしてくれます。
Q. 遺伝子の検査で、向いているスポーツがわかりますか?
この記事で紹介した双子の研究は、集団の中の差を調べたものです。1人の子に向いているスポーツを決めるものではありません。好きなスポーツを、思いきり楽しむのがいちばんです。
子どもへの声かけ
- 「毎日やってるから、うまくなってるね」
- 「昨日より1回ふえたね!」
- 「運動神経は、練習でつくれるんだよ」

運動神経は、生まれたときに決まって終わりじゃない。今日の1回が、明日の自己ベストにつながります!
まとめ
- 体力や運動の発達には遺伝の影響がある。家庭の環境の影響もある(双子の研究)
- 遺伝の割合は研究でばらつきがあり、1人の子の将来を決める数字ではない
- 運動の技術は、練習で伸びる。自由に遊ぶだけより、練習したほうが伸びる(Logan ほか 2012)
- 運動の技術が何歳で伸びなくなるという確かな区切りは見つからない
- 年長以降なら、毎日やれば、だれでもできるようになる(サカメシ!リフティング記録)
練習の続け方はリフティング記録、遊びのアイデアは運動神経をよくする遊び・練習、睡眠のことは睡眠と成長で紹介しています。
出典:(出典の一覧は「出典」のページを参照)
