本文へ移動
← 読み物の一覧
ケガ・体の悩みと運動・約9分

食べてから運動すると症状が出る子のサッカーごはん:食物依存性運動誘発アナフィラキシー(小麦・エビなど)と診断されたら、朝練・給食・試合の日の「食べる時刻」を組み直す

ふだんは食べても平気なのに、食べたあとに走ると症状が出るって言われたんだ。サッカーは続けられるのかな?

知恵袋に、中学3年でサッカーをしている男の子からの質問があります。朝ごはんを食べて、いつもどおり朝練をしたら、のどが腫れて、発疹が出た。病院で「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」と診断された。何を食べればいいのか分からない――という内容です。10歳の息子の保護者からも、運動誘発アナフィラキシーとスポーツの日のお昼ごはんについての相談が寄せられています。

食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)は、原因の食べ物を食べたあとに運動したときにだけ、症状が出るアレルギーです。だから、毎日の食事でいちばん大事になるのは「何を食べるか」に加えて「いつ食べるか」。結論から言うと、ポイントは次の3つです。

  • 練習や試合の前(日本学校保健会のガイドラインでは4時間以内)は、原因の食べ物を食べない
  • 練習や試合の前の食事と補食は、原因の食べ物を使わない献立で、しっかり食べる
  • 運動が終わってからの食事では、原因の食べ物も食べてよい。除きすぎず、時刻で分ける

食物依存性運動誘発アナフィラキシーってどんなもの?

日本学校保健会の「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」と、厚生労働科学研究班の「食物アレルギーの診療の手引き2023」から、要点をまとめます。

項目出典に書かれていること
どんなもの特定の食物を食べた後に運動することで、アナフィラキシーが誘発される
原因の食べ物小麦、甲殻類が多い(ガイドライン)。小麦・エビ・果物など(手引き)
起きやすい時期学童期〜成人期
どれくらいの子に2012年と2013年の横浜市の調査で、小学校で21,000人に1人、中学生で6,000人に1人程度
起きる時間原因食物を食べてから2時間以内の運動で起きることが多い
症状じんましんから始まり、呼吸困難やショック症状のような重い症状に至ることがある
大事な特徴食べただけ、運動しただけでは症状は起きない

ガイドラインには、単に食物アレルギーがあるだけなら、原則として運動を制限する必要はない、そしてFDEIAと診断された場合は管理が必要と書かれています。管理の中心が、食べる時刻です。

運動の何時間前から、食べないようにする?

2つの出典には、次のように書かれています。

出典運動の前食べたあと
学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン運動の予定があれば、原因食物を4時間以内に摂取しない食べてから4時間は運動しなければ問題ない
食物アレルギーの診療の手引き2023運動の2〜4時間前は原因食物の摂取を禁止-

ガイドラインでは、多くの場合は2時間以内の運動で発症するけれど、確実に症状を起こさない間隔として4時間としています。この記事では、4時間で時間割を組みます。診断を受けた子は、主治医から指示された時間と、学校に出す「学校生活管理指導表」の内容に合わせて組みましょう。

「食べちゃだめ」ではなく、「食べる時刻を動かす」。サッカーも、好きな食べ物も、どっちも続けられるよ!

試合の日の時間割:小麦が原因の子の例

10時キックオフの試合の日の例です。小麦が原因の子なら、朝6時以降は小麦を食べない計算になります。

時刻食べるもの小麦
6時30分朝ごはん:ごはん・焼き鮭・卵焼き・豆腐の味噌汁・バナナなし
8時30分補食:おにぎり1個なし
10時〜試合
試合と試合の間おにぎり、蒸したさつまいも、もちなし
試合のあと補食:おにぎり、バナナなし
18時30分(運動のあと)夕ごはん:うどんもOKあり

朝ごはんを、日本食品標準成分表で計算しました。

試合の日の朝ごはん(小麦なし)エネルギーたんぱく質炭水化物
ごはん200g・しろさけ60g・卵50g・木綿豆腐100g(味噌汁)・バナナ1本(100g)約623kcal約32.6g約98.5g

(日本食品標準成分表の100gあたりの値から計算。味つけの分はふくみません)

味噌汁の味噌や、卵焼きの醤油はどうでしょう。手引きの「原則として除去不要の食品」の表では、小麦アレルギーの場合、醤油・酢・麦茶があげられています。どこまで食べてよいかは、診断のときに受けた指示に合わせます。水筒の麦茶も、この表の中に入っています。

  • ごはん
  • しろさけ
  • 卵
  • 木綿豆腐
  • バナナ

小麦を使わない補食は、ごはんの仲間とおいもで

試合や練習の前の補食というと、パン・うどん・パスタ・クッキーが思いうかびます。小麦が原因の子は、運動の前はこれを、ごはんやおもち、おいもに置きかえます。

小麦を使わない補食エネルギー炭水化物
おにぎり1個(100g)約170kcal約39.4g
もち1個(100g)約223kcal約50.8g
蒸したさつまいも(100g)約131kcal約31.9g
干しいも(30g)約83kcal約21.6g
バナナ1本(100g)約93kcal約22.5g

(日本食品標準成分表の100gあたりの値から計算)

おにぎりともちは、炭水化物がたっぷりで、試合の合間の燃料になります。市販の補食を買うときは、原材料の表示で小麦を確かめます。表示の読み方は食物アレルギーの表示の見方の記事で紹介しています。

果物やエビが原因の子は、表の中の果物を外し、エビの入ったおかずを運動の前に入れないようにします。原因が何であっても、組み方は同じです。

  • おにぎり
  • もち
  • さつまいも
  • 干しいも

運動が終わったら、原因の食べ物も食べていい

手引きには、原因食物の完全除去や過度な運動制限にならないように注意すると書かれています。運動のあとの食事なら、原因の食べ物も食べられます。ガイドラインの「食べてから4時間は運動しなければ問題ない」に合わせて、夕ごはんのあとに走りに行かない日の夕食に入れましょう。

運動のあとの夕ごはんエネルギーたんぱく質炭水化物
ゆでうどん200g・卵50g・ほうれんそう50g(月見うどん)約270kcal約12.4g約45.0g

(日本食品標準成分表の100gあたりの値から計算。つゆの分はふくみません)

うどんだけでは量が足りないので、おにぎりや肉のおかずを足して、主食・主菜・副菜をそろえます。手引きでは、入浴も誘因のひとつにあげられています。小麦の入った夕ごはんの日は、お風呂を先にすませておくと、順番に迷いません。

  • うどん
  • 卵
  • ほうれんそう

学校の日:朝練・給食・放課後の練習

学校のある日は、朝練、昼休みの外遊び、5時間目の体育、放課後の練習と、運動の時刻がいくつもあります。

運動の時刻食べ方の例(小麦が原因の子)
朝練がある日朝ごはんは、ごはんの和食に。パンやシリアルは運動のない日に
給食のあと、昼休みや5時間目に運動給食にパンや麺が出る日の扱いを、学校生活管理指導表をもとに学校と決めておく
放課後の練習練習の4時間前より後に食べる補食は、おにぎりやバナナ
練習のあと帰ってからの夕ごはんは、原因の食べ物も入れてよい

給食のある日の昼ごはんの扱いは、学校と保護者で事前に決めておきます。給食の献立表をもらって、パンや麺の日に印をつけておくと、その日の練習の前後の食べ方を早めに決められます。給食の基準や献立表の使い方は給食のある日・ない日の記事でも紹介しています。

朝練がない日の昼ごはんの例(給食のない日)エネルギーたんぱく質カルシウム
ごはん250g・豚もも肉80g・ほうれんそう60g・牛乳200ml約660kcal約30.6g約260mg

(日本食品標準成分表の100gあたりの値から計算。味つけの分はふくみません)

  • ぶたもも
  • 牛乳

体調の悪い日は、とくに時刻を守る

手引きには、運動のほかに、かぜ、睡眠不足や疲労などのストレス、月経前の状態、解熱鎮痛薬(NSAIDs)の服用、入浴なども誘因になると書かれています。連戦で疲れている日、かぜ気味の日、寝不足の日は、いつも以上に、運動の前の食事を原因の食べ物なしにしておきます。連戦の日の食事は大会で連戦の日の記事へ。

また、手引きには、FDEIAとして経過を見ていても、運動なしに食べただけで症状が出ることがあると書かれています。遠征・合宿の前には、チームのコーチにも、原因の食べ物と、食べてはいけない時間帯を伝えておきましょう。

よくある質問

Q. サッカーは続けられますか?

A. ガイドラインには、原因の食べ物と運動の組み合わせで症状が出るので、食べただけ、運動しただけでは症状は起きないと書かれています。食べる時刻を組み直して、サッカーを楽しみましょう。

Q. 小麦を食べない時間帯は、エネルギーが足りなくなりませんか?

A. ごはん、おにぎり、もち、さつまいも、バナナで、炭水化物は十分にとれます。おにぎり2個(200g)で約340kcal、炭水化物約78.8gです。

Q. 試合会場で買うときは?

A. おにぎりを選び、原材料の表示で小麦を確かめます。コンビニの補食の選び方はコンビニで買える補食の記事にもあります。

Q. 夜に自主練をするときは?

A. 自主練も運動です。夕ごはんに原因の食べ物を入れた日は、食べてから4時間は走らないように、自主練を夕ごはんの前にします。

子どもへの声かけ

  • 「試合の前は、おにぎりとおいもで元気をためよう」
  • 「うどんは、試合が終わってからのお楽しみね」
  • 「パンを食べたら、4時間はボールを置いておこう」
  • 「かゆい、のどが変だと思ったら、すぐコーチに言ってね」
  • 「今日は疲れてるから、練習の前はごはんにしようか」

食べる時刻を味方にすれば、サッカーも好きなごはんも、どっちもあきらめなくていい!

まとめ

  • 食物依存性運動誘発アナフィラキシーは、原因の食べ物を食べたあとに運動したときに症状が出る。原因は小麦・甲殻類が多い
  • 横浜市の調査では、小学校で21,000人に1人、中学生で6,000人に1人程度
  • ガイドラインでは、運動の予定があれば原因食物を4時間以内に食べない。食べたら4時間は運動しない。手引きでは運動の2〜4時間前は摂取禁止
  • 運動の前の食事と補食は、ごはん・おにぎり・もち・さつまいもで、しっかり炭水化物を
  • 運動のあとの食事では、原因の食べ物も食べてよい。完全除去や過度な運動制限にしない
  • かぜ・寝不足・疲れ・解熱鎮痛薬・入浴も誘因。体調の悪い日は、とくに時刻を守る

出典

  • 食物アレルギー研究会「食物アレルギーの診療の手引き2023」(厚生労働科学研究費補助金 免疫・アレルギー疾患政策研究事業) https://www.foodallergy.jp/wp-content/uploads/2024/04/FAmanual2023.pdf
  • 日本学校保健会「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン 令和元年度改訂」 https://www.gakkohoken.jp/book/ebook/ebook_R010060/R010060.pdf
  • 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」 こめ 精白米 めし 01088・おにぎり 01111・もち 01117・しろさけ 生 10134・鶏卵 全卵 生 12004・木綿豆腐 04032・バナナ 07107・さつまいも 皮なし 蒸し 02007・さつまいも 蒸し切干 02009・うどん ゆで 01039・ほうれんそう 生 06267・ぶた もも 脂身つき 生 11130・普通牛乳 13003

出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」(出典の一覧は「出典」のページを参照)

この記事の間違いを知らせる