補食・スポーツドリンクとむし歯:食べる時間を決めて、しっかり食べて、歯を守る

「練習の前におにぎり、終わったらバナナ、試合の日はスポーツドリンク…。こんなに食べたり飲んだりして、歯は大丈夫?」
サッカーをする子は、ふつうの子より食べる回数も、飲む量も多くなります。補食はしっかり食べてほしい。でも、むし歯も気になる。そんな保護者の方に向けて、この記事では補食やスポーツドリンクを続けながら、歯を守る食べ方・飲み方を紹介します。
先に答えを言います。補食は食べる時間を決めて、しっかり食べる。食べたら水やお茶をひと口。スポーツドリンクは練習と試合で。夜は歯みがきをしてから寝る。 補食をやめる必要はまったくありません。
スポーツ選手と歯の話
2012年のロンドンオリンピックに出場した選手を対象に、歯の状態を調べた研究があります(Needleman ほか、Br J Sports Med 2013)。
| 調べたこと | 結果 |
|---|---|
| 調べた選手 | 278人(データがそろった人数) |
| むし歯があった選手 | 55.1% |
| 歯の酸による溶け(酸蝕) | 44.6% |
| 歯や口のことが練習や競技に影響したと答えた選手 | 18% |
(出典:Needleman ほか 2013)
世界のトップ選手でも、半分以上にむし歯がありました。たくさん食べ、たくさん飲み、練習で忙しい。スポーツをする人ほど、歯を守る工夫が大切だということです。

食べる回数が多いのはサッカーの子の強み。だからこそ、歯の守り方もセットで覚えましょう!
むし歯はどうしてできる?
口の中の細菌は、糖を材料にして酸をつくります。この酸が歯の表面を溶かします。島根県出雲保健所の資料では、歯の表面はpH5.4以下になると溶け始めるとされています。
食べたあとは口の中が酸性になり、時間がたつと唾液が元に戻してくれます。だらだらと長く食べたり飲んだりしていると、元に戻る時間がとれません。
| 食べ方 | 口の中 |
|---|---|
| 時間を決めて食べ、終わったら水やお茶 | 酸性の時間が短く、唾液で元に戻る |
| 少しずつ、長い時間ずっと食べる・飲む | 酸性の時間が長く続く |
(このサイトのまとめです)
つまり大事なのは「食べる量」ではなく、食べる時間の区切りです。おにぎり2個をしっかり食べて終わりにするほうが、お菓子を1時間かけてつまむより、歯にとってずっとやさしい食べ方です。
スポーツドリンクは「練習と試合の飲み物」
スポーツドリンクは、汗で失う水分・塩分・糖分をまとめて補える、練習や試合の強い味方です。島根県の資料でも、水分・電解質の補給や熱中症の予防に使われる飲み物とされています。
一方で、こんな特徴もあります。
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| 糖分 | 500mLのペットボトルに砂糖約25g(東京都保健医療局) |
| 酸 | pH3.4〜4.6の酸性の飲み物(島根県出雲保健所) |
| 飲みやすさ | 甘くて飲みやすく、何度も飲みやすい(島根県出雲保健所) |
そこで、使う場面をはっきり分けます。
| 場面 | 飲み物 |
|---|---|
| 暑い日の練習・試合・長い練習 | スポーツドリンク。飲んだら水をひと口 |
| ふだんの学校・家・移動中 | 水・麦茶 |
| 食事のとき | 水・お茶・牛乳・汁物 |
| 寝る前 | 水(歯みがきのあと) |
(このサイトのまとめです)
水筒を2本持たせて、スポーツドリンクと水を両方入れておくのもおすすめです。スポーツドリンクを飲んだあとに水をひと口飲むだけで、口に残る糖分と酸を流せます。くわしい飲み方はスポーツドリンクの選び方と飲み方で紹介しています。

練習中はスポーツドリンク、飲んだら水でひと口。水筒2本作戦です!
補食の選び方:歯の目で見ると
補食の役目は、練習のエネルギーと体の材料をとることです。そのうえで、「口に残りやすいか」「時間をかけずに食べ終われるか」を見ると、歯にもやさしい補食が選べます。
| 補食と量 | エネルギー | 炭水化物 | 歯の目で見るポイント |
|---|---|---|---|
| おにぎり(ごはん100g) | 156kcal | 36.1g | 甘くなく、さっと食べ終われる |
| 食パン 6枚切り1枚(60g) | 149kcal | 26.5g | チーズや卵をはさむと1品で完成 |
| バナナ 1本(100g) | 93kcal | 21.1g | 皮をむいてすぐ食べられる |
| みかん 1個(100g) | 49kcal | 11.3g | 水分も一緒にとれる |
| さつまいも(皮つき 生100g分) | 127kcal | 30.5g | ふかして持たせる。よくかんで食べる |
| カステラ 1切れ(50g) | 157kcal | 31.3g | 食べたら水やお茶をひと口 |
| 牛乳 コップ1杯(200g) | 122kcal | 10.6g | カルシウム220mg。食後の飲み物に |
| プロセスチーズ 1個(20g) | 63kcal | 0.5g | カルシウム126mg。甘い補食のあとに |
| ゆで卵 1個(50g) | 67kcal | 1.1g | たんぱく質6.3g。甘くない補食 |
(日本食品標準成分表で計算。炭水化物は差引き法による利用可能炭水化物)
ごはん
バナナ
みかん
さつまいも
牛乳
チーズ
ゆで卵
甘い補食も、練習前のエネルギーとして大切な食べ物です。カステラやどら焼きを食べた日は、そのあとに水やお茶を飲む、チーズや牛乳を合わせる、という形にすれば十分です。
組み合わせの例
| 場面 | 組み合わせ | ポイント |
|---|---|---|
| 学校から帰って練習へ | おにぎり2個+麦茶 | エネルギー312kcal・炭水化物72.2g |
| 練習の直後 | バナナ1本+牛乳1杯+水 | 炭水化物とたんぱく質。最後に水でひと口 |
| 試合の合間 | カステラ1切れ+スポーツドリンク+水 | すばやくエネルギー。水で口を流す |
| 寝る前におなかがすいた | チーズトースト+牛乳、そのあと歯みがき | 食べてから歯みがき、の順番で |
(日本食品標準成分表で計算)
練習前の補食の選び方は練習前の補食、補食全体の考え方は補食ってなに?で紹介しています。
1日の流れで見る「食べる時間」と「歯みがき」
| 時間 | 食べる・飲む | 歯のために |
|---|---|---|
| 朝 | 朝ごはんをしっかり | 朝ごはんのあとに歯みがき |
| 学校 | 給食・水筒の水やお茶 | 給食のあとに歯みがき・うがい |
| 帰宅後 | 補食(おにぎり・パン・果物) | 食べ終わったら水やお茶 |
| 練習中 | 水・スポーツドリンク | スポーツドリンクのあとに水 |
| 練習後 | 補食・夕食 | 夕食は時間を決めてしっかり食べる |
| 寝る前 | 歯みがき | 歯みがきのあとは水だけ |
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歯みがきは「寝る前」がいちばん大事
日本小児歯科学会などの4学会がまとめた「フッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法(2023年版)」では、次のように示されています。
| 年齢 | 使う量 | フッ化物の濃度 | 使い方 |
|---|---|---|---|
| 3〜5歳 | グリーンピース程度(5mm程度) | 900〜1000ppmF | 寝る前を含め1日2回 |
| 6歳〜成人 | 歯ブラシ全体(1.5〜2cm程度) | 1400〜1500ppmF | 寝る前を含め1日2回 |
(出典:4学会「フッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法(2023年版)」)
使い方のポイントも書かれています。
- 歯みがきのあとは、歯磨剤を軽くはき出す
- うがいをするときは、少量の水で1回だけ
小学生・中学生のサッカーの子は、歯ブラシ全体に1400〜1500ppmFの歯磨き粉をつけて、寝る前を含めて1日2回。うがいは少量の水で1回。これだけ覚えておけば大丈夫です。

寝る前の歯みがきが、1日のいちばん大事なひとみがき。みがいたら、あとは水だけ!
家で作れる、歯にもうれしい補食のアイデア
いつもの補食に、ひと工夫するだけで十分です。
| 補食 | 作り方のポイント | 合わせる飲み物 |
|---|---|---|
| 鮭おにぎり・しらすおにぎり | ごはんに具を混ぜてにぎる。のりを巻くと持ちやすい | 麦茶 |
| チーズおかかおにぎり | 角切りチーズとかつお節を混ぜこむ | 麦茶・水 |
| 卵サンド | ゆで卵をつぶしてパンにはさむ | 牛乳 |
| ふかしいも | さつまいもを蒸して、ひと口大に切って持たせる | 水 |
| バナナきな粉 | 輪切りのバナナにきな粉をまぶす | 牛乳 |
| フルーツヨーグルト | みかんやキウイをヨーグルトにのせる | 水 |
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どれも、さっと食べ終われて、食べたら水やお茶で区切りやすい補食です。作り置きしておけば、子どもが帰ってすぐ食べられます。冷蔵庫の決まった場所に「補食コーナー」をつくっておくと、子どもが自分で選んで食べ、食べ終わったら水を飲む流れが自然に身につきます。
合宿・遠征・試合の日
外に出る日は、歯みがきの時間がとりにくくなります。持ち物と順番を決めておきましょう。
| 場面 | 工夫 |
|---|---|
| 合宿・遠征の荷物 | 歯ブラシ・歯磨き粉を洗面用具と一緒に。水筒は2本 |
| 移動中 | 補食は休憩のときに食べて、食べたら水 |
| 試合の日 | ハーフタイムや試合の合間の補食のあとに水をひと口 |
| 宿の夜 | 夜食を食べたら、そのあと歯みがき |
| 試合帰りの車内 | 補食を食べたら水やお茶。家に着いたら夕食、そして歯みがき |
(このサイトのまとめです)
ハーフタイムの補給はハーフタイムに何を食べる?、合宿の準備は合宿・遠征の食事で気をつけることで紹介しています。
よくある質問
Q. 補食の回数を減らしたほうがいい?
減らさなくて大丈夫です。補食は練習のエネルギーと成長のための大事な食事です。大切なのは回数ではなく、1回ごとに時間を決めて食べ終わり、水やお茶で区切ること。
Q. スポーツドリンクは水でうすめたほうがいい?
運動中は、そのままの濃さで汗の塩分と糖分を補うのが役目です。うすめるより、「練習と試合で飲む」「飲んだら水をひと口」と使い分けるほうが、体にも歯にもうまくいきます。
Q. 練習の日は毎日スポーツドリンクを持たせています
練習中に飲むなら問題ありません。家に帰ってからや、寝る前は水や麦茶に切りかえましょう。水筒2本にしておくと、子どもが自分で選べます。
Q. 甘いお菓子は食べないほうがいい?
食べて大丈夫です。おやつの時間を決めて食べ、食べ終わったら水やお茶。夜は歯みがき。これで歯は守れます。甘いものは、練習前のすばやいエネルギーにもなります。
Q. 練習が夜遅くて、夕食のあとすぐ寝ます
夕食のあとに歯みがき、そのあとは水だけ。この順番を決めておけば、夜遅い日でも大丈夫です。夜遅い日の食べ方は夜遅い練習の日の夕食で紹介しています。
Q. 牛乳やチーズは歯にいいの?
牛乳1杯(200g)でカルシウム220mg、プロセスチーズ1個(20g)で126mgとれます。歯と骨の材料になるカルシウムをとるのにぴったりの補食です。甘い補食のあとに合わせるのもおすすめです。
Q. マウスピースをつけて試合に出ます
マウスピースをつけたままスポーツドリンクを飲むと、口の中に残りやすくなります。ハーフタイムや試合のあとに、水で口をすすいでおきましょう。マウスピースは、使ったあとに水で洗って乾かしておきます。
子どもへの声かけ
- 「補食、しっかり食べたね。最後に水をひと口飲んでおこう」
- 「スポーツドリンクは練習用。家では麦茶にしよう」
- 「寝る前の歯みがき、歯ブラシいっぱいに歯磨き粉をつけてね」

しっかり食べて、しっかり飲んで、しっかりみがく。強い歯で、最後まで戦おう!
まとめ
- ロンドン五輪の選手の55.1%にむし歯があった。スポーツをする子ほど、歯を守る工夫を(Needleman ほか 2013)
- 歯は口の中がpH5.4以下になると溶け始める。食べる時間を決めて、終わったら水やお茶で区切る
- スポーツドリンクは500mLに砂糖約25g、pH3.4〜4.6。練習と試合で飲み、飲んだら水をひと口
- 補食はやめずに、しっかり食べる。おにぎり・パン・果物・牛乳・チーズ・卵を組み合わせて
- 6歳からは1400〜1500ppmFの歯磨き粉を歯ブラシ全体に、寝る前を含め1日2回
補食のレシピはレシピ一覧、1週間の流れは1週間の献立から探せます。
出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」(出典の一覧は「出典」のページを参照)
