試合中にわき腹・お腹が痛くなる子の食べ方:食べる時刻・量・飲み物の選び方

「試合の前半、走っているうちに、わき腹をおさえて止まってしまう」「朝ごはんをしっかり食べさせたのに、試合中にお腹が痛いって言うんです」
走るとわき腹がキリキリ痛む。サッカーをしていると、一度は聞く話です。知恵袋にも「試合中にお腹が痛くなったら、選手はどうしているの?」という質問があり、子ども向けの科学サイトでも「食べてから走ると、どうしておなかが痛くなるの?」がよく読まれています。
この痛みには、スポーツ医学で名前がついています。運動に関係する一過性の腹痛(ETAP)、いわゆる「わき腹の痛み」です。研究からわかってきたのは、食べる量と時刻、そして飲み物の種類で起こりやすさが変わること。この記事では、試合の前の日から当日のハーフタイムまで、わき腹が痛くならない食べ方を紹介します。
わき腹の痛みは、とてもよくあること
スポーツ医学の総説(Morton & Callister 2015)によると、ランナーの約70%が「この1年で経験した」と答えています。1回のレースでも、約5人に1人が痛みを感じています。
| 調べたこと | 結果 |
|---|---|
| ランナーで、この1年に経験した人 | 約70% |
| 1回の大会で痛くなった人 | 約5人に1人 |
| 20歳未満の運動する人で、経験がある人 | 77% |
| 40歳をこえた人で、経験がある人 | 40% |
| 痛む場所 | 肋骨の下のふち、お腹の真ん中から上のあたり。約80%は「ここ」と指でさせる痛み |
| 右と左 | 右側のほうが、多いと最大で2倍 |
(出典:Morton & Callister 2015)
ポイントは、若い人ほど多いことです。年齢が上がるにつれて、起こる回数も痛みの強さも小さくなります。10歳より前はあまり見られず、思春期によく起こるとも書かれています。小学校高学年から中学生は、ちょうど痛みが出やすい年ごろです。

体をくり返しひねったり、上下にゆらしたりする運動で起こりやすい痛みです。止まっては走るサッカーも、まさにそうですね。
どうして食べたあとに痛くなるの?
子ども向けの科学サイト(Gakkenキッズネット)では、こう説明されています。食べたあとは、消化のために胃や腸にたくさんの血液が集まります。そこで走ると、血液が足の筋肉に回り、胃や腸に届く血液が足りなくなります。胃や腸がけいれんを起こし、まわりの神経がそれを「痛み」として感じる、というしくみです。
研究でも、食べ物と飲み物はわき腹の痛みと深く関わっています。
- 運動する人の52%が「運動前に食べると痛くなる」、38%が「飲むと痛くなる」と答えている
- 大会の前、体重に対して食べた量・飲んだ量が多い人ほど、痛みが多かった
- 一方で、炭水化物・脂質・たんぱく質・エネルギーといった中身は、痛みと関係がなかった
- スタートの1〜2時間前に大きな食事をとったランナーは、痛みが出やすかった
(出典:Morton & Callister 2015)
つまり、わき腹の痛みを左右するのは、「何を食べたか」より「直前に、どれだけの量がお腹に入っているか」。ごはんやパンなどの炭水化物が悪いわけではありません。試合の燃料になるごはんは、食べる時刻を前にずらして、しっかり食べるのが正解です。
大きな食事は、キックオフの3〜4時間前に
総説では、わき腹が痛くなりやすい人は、運動前の2時間は、量の多い食事や飲み物を避けること、とくに痛くなりやすい人は3〜4時間前が目安とされています。
これは、試合の日の食事の目安とぴったり重なります。UEFA(ヨーロッパサッカー連盟)の専門家グループの声明では、キックオフの3〜4時間前に、炭水化物の多い食事を、体重1kgあたり1〜3g。水分は2〜4時間前に体重1kgあたり5〜7mlです。
| キックオフまで | 食べ方・飲み方 | 体重35kgの子の場合 |
|---|---|---|
| 3〜4時間前 | しっかりした食事(ごはん・パン・うどん+卵や魚) | 炭水化物 35〜105g |
| 2〜4時間前 | 水やお茶を、コップで何回かに分けて | 175〜245ml |
| 1〜2時間前 | おなかがすいたら、ひと口サイズの補食 | バナナ半分・小さいおにぎりなど |
| 試合中・ハーフタイム | 水・スポーツドリンクを、ひと口ずつこまめに | ― |
1〜2時間前は、大きな食事をとると痛みが出やすい時間帯です(Morton & Callister 2015)。ここで食べるのは、ひと口で食べられて、お腹にたまりにくいものにします。

「朝ごはんを早めに、しっかり」。これが、わき腹の痛みと燃料切れの両方を防ぐ合言葉です!
10時キックオフの日の食べ方の例
体重35kgの小学校高学年の子の例です。炭水化物の量は日本食品標準成分表で計算しました。
| 時刻 | 食べるもの | 炭水化物 |
|---|---|---|
| 6:30 朝ごはん | ごはん 茶碗大盛り1杯(200g) | 74.2g |
| 焼き鮭(60g)・卵焼き(卵1個)・みそ汁 | ― | |
| バナナ 1本(100g) | 22.5g | |
| 7:00〜8:00 | 水やお茶をコップ1杯ずつ、何回かに分けて | ― |
| 8:30 会場で | おなかがすいたら、みかん1個(100g)またはカステラ1切れ(50g) | 11.5g/30.9g |
| ハーフタイム | 水やスポーツドリンクを、ひと口ずつ | ― |
| 試合のあと | おにぎり 1個(100g)+牛乳 | 39.4g |
朝ごはんだけで炭水化物は約97g。35kgの子の目安35〜105gの中に入ります。朝ごはんを3時間半前に食べ終えておけば、キックオフのころにはお腹も落ち着いています。
ごはん
鮭
卵
バナナ
朝がもっと早い試合の日
9時キックオフで6時に食べるのが難しい日は、前の日の夕食でごはんをしっかり食べておきます。当日の朝は、のどを通りやすいおにぎりやうどんを、起きてすぐに。うどんはゆでたもの200gで炭水化物43.2g、食パン6枚切り1枚(60g)で27.8gです。
おにぎり
うどん
食パン
カステラ
試合当日の時間ごとの食べ方は、試合当日の食事:何時間前に何を食べる?でも紹介しています。
飲み物は「濃い甘さ」に注意して、ひと口ずつ
わき腹の痛みに、いちばん関係が深いと言われているのが飲み物です。研究では、濃い甘い飲み物(体液より濃い飲み物。実験ではコーラなど)がいちばん痛みを起こしやすく、スポーツドリンクのような体液に近い濃さの飲み物は、水よりも痛みが出にくかったと報告されています(Morton & Callister 2015)。
| 飲み物 | わき腹の痛みとの関係(研究の結果) | 試合の日の使い方 |
|---|---|---|
| 濃い甘い飲み物(実験ではコーラ) | いちばん痛みを起こしやすかった | 試合が終わってからのお楽しみに |
| スポーツドリンク | 水より痛みが出にくかった | 試合前・ハーフタイムに、ひと口ずつ |
| 水・お茶 | ― | 一度にたくさんではなく、こまめに |
総説では、運動中は少しずつ、くり返し飲むほうが体になじみやすいこと、そして飲むことにも「慣れ」があり、練習でくり返すと上手に飲めるようになることも書かれています。
ふだんの練習から、「休憩のたびに、ひと口、ふた口」を習慣にしておきましょう。試合の日だけ急にたくさん飲むより、お腹がずっと楽になります。スポーツドリンクの選び方はスポーツドリンクの選び方と飲み方を見てください。

水筒は「一気飲み」より「ちょこちょこ飲み」。練習のときから、そのリズムで!
ハーフタイムの補給
ハーフタイムは、後半に向けて燃料を足す時間です。ここでも、一度にたくさん詰めこまないのがコツ。ゼリーやスポーツドリンクを数口、バナナなら2〜3切れが食べやすい形です。後半の補給についてはハーフタイムに何を食べる? 飲む?で詳しく紹介しています。
痛くなったときの手当て
総説では、約600人の経験者が実際にやっている方法が紹介されています。
| 方法 | やっている人の割合 |
|---|---|
| 深く呼吸をする | 40% |
| 痛いところを手で押す | 31% |
| 痛いところを伸ばす | 22% |
| 前かがみになる | 18% |
(出典:Morton & Callister 2015)
いちばん確実なのは、いったん動きをゆるめること。走るのをやめると、痛みはすぐにおさまっていきます。試合中なら、近くのコーチや審判に手で合図をして、プレーを一度ゆるめましょう。
お腹にボールや相手の体が強く当たったあとの痛みは、わき腹の痛みとは別のものです。そのときは、すぐにコーチや大人に伝えるよう、子どもと話しておきましょう。
体づくりでも防げる
総説では、食べ方のほかに、姿勢をよくすること、体幹をきたえること、体力をつけることで痛みが出にくくなるとも書かれています。ふだんからしっかり食べて、しっかり練習している子ほど、わき腹の痛みとうまくつきあえるようになります。
牛乳
ヨーグルト
みかん
ブロッコリー
よくある質問
Q. 痛くなるのがいやで、朝ごはんを食べたがりません
朝ごはんを抜くと、後半に燃料が切れてしまいます。研究で痛みと関係があったのは食事の中身ではなく、直前の量です。食べる時刻を早めて、ごはんをしっかり食べれば大丈夫。どうしても朝早い日は、前の日の夕食をしっかり食べておきましょう。
Q. 何も食べていないのに痛くなりました
総説では、何時間も食べたり飲んだりしていなくても、痛みが出ることがあると書かれています。食べ方だけでなく、深い呼吸や体幹づくりも合わせてやっていきましょう。
Q. 右と左、どちらが痛くなりやすいの?
右側のほうが多く、多いと左の2倍と報告されています(Morton & Callister 2015)。
Q. 甘いジュースが好きで、試合の前も飲みたがります
コーラのような濃い甘い飲み物は試合の直前より、試合のあとや食事のときに向いています。試合前とハーフタイムは、水・お茶・スポーツドリンクにしましょう。「試合が終わったら、好きなジュースで乾杯しよう」と決めておくと、子どもも納得しやすくなります。
Q. 大会で1日2試合あるときは?
1試合目と2試合目の間が短いときは、大きなお弁当を一度に食べず、おにぎりやバナナを何回かに分けて食べます。大会の日のお弁当で、試合と試合の間の食べ方を紹介しています。
Q. 練習でもよく痛くなります
練習の直前におやつをたくさん食べていないか、見てみましょう。練習前の補食の時刻と量は練習前の補食:何時間前に、何を食べる?にまとめています。
子どもへの声かけ
- 「朝ごはんは6時半。早めに食べて、お腹を軽くして試合に行こう」
- 「水筒は、ひと口ずつ。休憩のたびに飲もうね」
- 「ジュースは、試合が終わってからのごほうびね」
- 「痛くなったら、深呼吸して、手で合図してね」
- 「後半も走れたね! 朝ごはんを早く食べたおかげだね」

食べる時刻を前にずらして、飲み物はひと口ずつ。わき腹を気にせず、最後まで走りきりましょう!
まとめ
- わき腹の痛み(ETAP)は、ランナーの約70%が1年に経験する、よくある痛み。若い人ほど多い
- 痛みと関係があるのは、食べ物の中身ではなく、直前にお腹に入っている量
- 大きな食事は、キックオフの3〜4時間前に。炭水化物は体重1kgあたり1〜3g
- 1〜2時間前は、バナナやみかんなど、ひと口サイズの補食
- 濃い甘い飲み物は試合のあとに。試合前・ハーフタイムは水やスポーツドリンクをひと口ずつ
- 飲むことにも慣れがある。ふだんの練習から「こまめに飲む」を習慣に
- 痛くなったら、深呼吸して、いったん動きをゆるめる
試合の朝に作りやすい料理はレシピ一覧から探せます。
出典:UEFA エリートサッカーの栄養に関する専門家声明(2021)、文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」(出典の一覧は「出典」のページを参照)
