補食を自分で選び、作れる子に:親子の声かけと台所

「お母さん、今日の補食なに?」。毎回聞かれるたびに、いつか自分で選べるようになってほしい、と思いませんか。
補食を自分で選べる子は、合宿でも、大会の日のコンビニでも、中学生になって部活の帰り道でも、自分の体に合ったものを手に取れます。選ぶ力は、「いつ・何を・どう持つ」の3つの問いと、台所での小さな出番で育ちます。 この記事では、家で今日から使える声かけと、子どもに任せやすい補食づくりを紹介します。
国内の中学生女子サッカー選手と保護者を対象にした研究では、食事の写真をもとに栄養の専門家とやりとりを続けることで、食品を選ぶ力が伸びていました(吉田・井上 2020)。知識を一度教えるより、実際の食事で選んで、振り返るくり返しが力になります。
3つの問いで選ぶ
| 問い | 親子で話す例 |
|---|---|
| いつ食べる? | 練習の前? 練習のあと夕食までの間? |
| 何を食べる? | 練習前ならおにぎりやバナナ。練習後なら主食に牛乳やヨーグルトを足す |
| どう持っていく? | 家で食べる? バッグに入れる? 冷やすものは保冷剤と一緒に |
JFAの栄養ガイドラインでは、1回の食事で食べきれないときや、食事の時間がとれないときに、補食を使う考え方が示されています。練習のあとは、なるべく早く、2時間以内に食べるのが目安です。

補食の候補カード
冷蔵庫に貼っておくと、子どもが自分で選べます。
| 補食 | 量の例 | 炭水化物 | ほかに | 向いている時間 |
|---|---|---|---|---|
| おにぎり | 1個(100g) | 39.4g | ― | 練習前・練習後 |
| バナナ | 1本(可食部100g) | 22.5g | ― | 練習前・練習中の休み |
| カステラ | 1切れ(50g) | 30.9g | ― | 練習前 |
| 食パン | 6枚切り1枚(60g) | 27.8g | ― | 家で食べる練習前 |
| 飲むヨーグルト | 1本(200g) | 24.4g | カルシウム220mg | 練習後 |
| 牛乳 | コップ1杯(200g) | 9.6g | たんぱく質6.6g | 練習後 |
| プロセスチーズ | 1個(20g) | 0.3g | たんぱく質4.5g | 練習後におにぎりと |
| ゆで卵 | 1個(50g) | 0.2g | たんぱく質6.3g | 練習後におにぎりと |
(日本食品標準成分表で計算)
おにぎり
バナナ
カステラ
飲むヨーグルト
プロセスチーズ
ゆで卵
選び方のルールは2つだけ。練習前は「主食」をひとつ。練習後は「主食」+「牛乳・乳製品か卵」。これを覚えれば、コンビニでも宿でも選べます。
カードの裏に「中身」を書いておく
候補カードの裏に、1回分の量と中身を書いておくと、子どもが自分で組み合わせを考えられます。
| 補食 | 1回分の量 | 成分表で計算した中身 |
|---|---|---|
| おにぎり | 1個(100g) | 炭水化物39.4g |
| バナナ | 1本(可食部100g) | 炭水化物22.5g |
| カステラ | 1切れ(50g) | 炭水化物30.9g・たんぱく質3.6g |
| 飲むヨーグルト | 1本(200g) | 炭水化物24.4g・カルシウム220mg |
| プロセスチーズ | 1個(20g) | たんぱく質4.5g・カルシウム126mg |
| ゆで卵 | 1個(50g) | たんぱく質6.3g |
(このサイトのまとめです)
練習前は、炭水化物の多い上の4つから。練習のあとは、おにぎりにチーズやゆで卵を組み合わせると、炭水化物とたんぱく質がいっしょにとれます。「おにぎり+チーズで、どっちも入るね」と、子どもが自分で気づけるのがこのカードのよさです。
カードは、冷蔵庫の扉に貼っておくと、毎朝の「何持っていく?」が早く決まります。
「どっちにする?」から始める
最初は大人が2つの候補を出し、子どもが選びます。
- 「練習まで1時間あるね。おにぎりとバナナ、どっちにする?」
- 「今日は夕食が遅いから、練習のあとはおにぎりと飲むヨーグルトにしようか」
選んだら、理由を聞きます。「すぐ食べられるから」「おにぎりは置く場所がないから」。理由がわかると、その子の練習の環境に合った候補が増やせます。福岡県の小学4〜6年生と保護者の調査では、親が気をつけさせていることと、子ども自身が気をつけていることの答えにちがいがありました(西村ほか 2020)。本人の言葉を聞くのが、いちばんの近道です。
「いつもの補食、飽きた」と言われたら
| 子どもの答え | 次に試すこと |
|---|---|
| 同じ味に飽きた | おにぎりの具を鮭・おかか・ツナマヨで回す |
| 大きくて時間内に食べきれない | 小さめのおにぎり2個に分ける |
| 包みが開けにくい | 家で一度開けてみる。ラップおにぎりにする |
| 練習前はお腹に入らない | バナナやカステラなど、軽く食べられるものに |
新しい補食は、試合の日ではなく、ふだんの練習の日に試します。
台所で、補食を「作る」出番
選べるようになったら、次は作る番です。最初から全部ではなく、ひとつの工程を任せます。

| 補食・料理 | 任せる工程の例 | 大人が受け持つこと |
|---|---|---|
| ラップおにぎり | ラップにごはんをのせて、にぎって形を作る | ごはんを触れる温度に冷ます、具の準備 |
| バナナヨーグルト | 切ったバナナを器に入れ、ヨーグルトをかける | バナナを切る |
| チーズトースト | 食パンにチーズをのせる | トースターの出し入れ |
| 卵サンド | ゆで卵の殻をむいて、つぶして混ぜる | 卵をゆでる |
おにぎりはラップを使うと、手が汚れず、そのまま持っていけます。作る前は手を洗い、できたおにぎりは早めに食べるか、保冷剤と一緒にバッグへ。
国内の小学4〜6年生向けの調理プログラムでは、参加後に「自分だけで作れる料理」の数が増えていました(坂本ほか 2019)。
頼み方は「何を・どこまで」
「手伝って」より、「このごはんを3個のおにぎりにして、お皿に並べて」と、やることと終わりを伝えます。できたら「形がそろったね」「ぎゅっとにぎれたね」と、できた作業をそのまま言葉にします。次の休みにも同じ工程を任せると、だんだん手際がよくなります。
都内の小学3・4年生と保護者の調査では、料理への気持ちは親子で同じではありませんでした(吉井ほか 2018)。子どものやる気と大人のゆとりは、日によってちがいます。平日は盛りつけ、休日はにぎるところまで、と家の予定に合わせます。
声かけは「栄養」より「味と場面」
4〜18歳の子ども70人に、食についての話をどう感じるかを聞いた研究では、子どもたちは味や楽しさ、料理や味見の体験、自分の意見を聞いてもらうことに関心を持っていました(Quigleyほか 2025)。
| 場面 | 声かけの例 |
|---|---|
| おにぎりを選ぶ | 「鮭とおかか、今日はどっち?」 |
| 練習のあと | 「お腹の空き具合はどう? おにぎり2個いける?」 |
| 新しい補食 | 「この味、どう? 次も入れる?」 |
| 食べ残した日 | 「食べる時間はあった?」 |
「体にいいから食べて」だけで終わらず、「夕食まで時間があるから、今のうちに」「持ち歩きやすいね」と、選ぶ理由を具体的に話します。
帰ってきたら、30秒の振り返り
- 食べる時間はあった?
- 自分で開けて食べられた?
- 練習中、お腹の具合はどうだった?
- 次も同じにする?
点数をつけるのではなく、次の準備のヒントにします。ポルトガルの13〜18歳の男子サッカー選手を対象にした食育の試みでは、知識の点数が上がりました(Vicenteほか 2025)。家では、知ったことを毎回の補食で使うことで、食べ方につながっていきます。
補食を忘れた日は
気づいたら、まずチームの大人に伝えます。近くで買えるなら、「主食をひとつ」のルールで選びます。友だちに分けてもらうときは、アレルギーがあるので大人に確かめてから。帰ったら「次はどこに入れると気づくかな」と、持ち物の置き場所を一緒に決めましょう。
1週間の補食を、子どもが決める
慣れてきたら、日曜の夜に1週間の予定を見て、子どもが補食を決める日を作ってみましょう。大人は買い物メモに書くだけです。
| 曜日 | 予定 | 子どもが決めた補食 | 理由(子どもの言葉) |
|---|---|---|---|
| 月 | 17時から練習 | 鮭おにぎり1個 | 学校から帰ってすぐ食べられる |
| 火 | 練習なし | おやつにヨーグルトとバナナ | 好きだから |
| 水 | 17時から練習、終わるのが19時半 | 練習前におにぎり、練習後に飲むヨーグルト | 夕食まで長いから |
| 木 | 練習なし | チーズトースト(自分で作る) | 作ってみたい |
| 金 | 18時から練習 | カステラ1切れ | 練習まで時間が短い |
| 土 | 試合 | おにぎり2個、バナナ、オレンジ | 試合の間に少しずつ |
(このサイトの例です)
理由の欄が書けるようになったら、選ぶ力はしっかり育っています。合宿や遠征の前に、この表を一緒に作ると、宿でも自分で補食を選べます(合宿・遠征の食事)。
おにぎりの具を自分で選ぶ
おにぎりは、具を変えるだけで、たんぱく質やカルシウムも一緒にとれます。
| 具 | 量の例 | ひとこと |
|---|---|---|
| 鮭フレーク | 大さじ1 | 定番。子どもが好きな味 |
| ツナマヨ | ツナ缶1/4(18g) | たんぱく質3.2g(ツナ缶 油漬 ライトで計算) |
| しらす | 大さじ2(10g) | カルシウム52mg(しらす干し 半乾燥品で計算) |
| チーズ | プロセスチーズ1/2個(10g) | カルシウム63mg |
| おかか | 小袋1つ | しょうゆを少したらして |
(日本食品標準成分表で計算)
具を2〜3種類並べておき、「今日はどれにする?」と聞くと、子どもは自分の好きな組み合わせを見つけていきます。
中学生になったら:コンビニで自分で選ぶ
中学生になると、部活やクラブの行き帰りに、自分のおこづかいで補食を買う場面がふえます。家で「主食をひとつ」のルールが身についていれば、コンビニでも迷いません。
| 場面 | コンビニで選ぶ例 |
|---|---|
| 練習の前 | おにぎり1〜2個、バナナ、カステラ、蒸しパン |
| 練習のあと、夕食まで1時間以上 | おにぎり+飲むヨーグルトか牛乳 |
| 練習のあと、すぐ夕食 | 牛乳やヨーグルトドリンクを1本 |
| 暑い日 | おにぎり+スポーツドリンク、冷たいゼリー飲料 |
(このサイトの例です)
レジに行く前に、「主食はある?」「練習のあとなら、牛乳かヨーグルトもある?」と、自分で確かめるくせをつけておきましょう。ラベルの読み方は市販の補食で紹介しています。
よくある質問
Q. 何年生から自分で選ばせていい?
2つの候補から選ぶのは、低学年からできます。高学年になったら、予定を聞いて自分で候補を出すところまで任せてみましょう。
Q. お菓子ばかり選んだら?
練習前のカステラは、炭水化物がしっかりとれる補食です。チョコ菓子やスナック菓子を選んだときは、「おにぎりと一緒ならOK」と主食を足す形にすると、本人の選択を生かせます。
Q. 包丁や火は、いつから任せる?
年齢より、台所に立った回数で決めます。大人がやって見せ、横で一緒に何度か行ってから、ひとりの工程にしましょう。
Q. 選んだ補食が、練習の量に足りない気がします
練習のあとにお腹がすいていたら、次の回はおにぎりを1個ふやすか、飲むヨーグルトを足します。「今日はお腹すいた?」と帰り道に聞いて、量を一緒に決めていきましょう。
子どもへの声かけ
- 「今日は何時に食べる? じゃあ、何にする?」
- 「おにぎり、自分でにぎってみる?」
- 「自分で選んだ補食、どうだった?」

自分で選んで、自分でにぎったおにぎり。練習のあとの1個は、いつもよりおいしいね!
まとめ
- 選ぶ力は「いつ・何を・どう持つ」の3つの問いで育つ
- 練習前は主食をひとつ、練習後は主食+牛乳・乳製品か卵
- 台所では、ひとつの工程から任せる。頼み方は「何を・どこまで」
- 声かけは、栄養の説明に、味と場面の話を足す
- 帰宅後の30秒の振り返りが、次の補食選びにつながる
補食の基本は補食の基本、練習前は練習前の補食、買うときは市販の補食で紹介しています。
出典:日本サッカー協会「JFA栄養ガイドライン」、文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」(出典の一覧は「出典」のページを参照)
