後半に走り負けないための、試合前日・当日の食べ方

「後半の最後、相手に走り勝てない」「終盤になると、ボールに追いつけない」。そんな悩みを聞くことがあります。
後半に走り負けない体には、2つの準備があります。
- 試合の前日・当日に、炭水化物で燃料をためる(短い期間の準備)
- ふだんから鉄をとって、酸素を運ぶ力を保つ(長い期間の準備)
この記事では、この2つを順番に紹介します。
なぜ後半に走れなくなるの?
サッカーは、ダッシュと軽い走り、歩きをくり返す競技です。全力のダッシュの燃料は、主に筋肉にたくわえたグリコーゲンです。試合が進むと筋肉のグリコーゲンが減り、ダッシュをくり返す力が落ちます。
プロの試合の研究でも、全力に近い走りの量は、試合の最後の15分で最初の15分より35〜45%減っていました(Mohr ほか 2003)。ポジションや試合のレベルに関係なく、この傾向が見られています。
だからこそ、試合の前に筋肉のグリコーゲンを満タンにしておくことが、後半の走りを支えます。サッカーの性質についてはサッカーはどんな競技?でくわしく紹介しています。

前半の走りは「今日の朝ごはん」、後半の走りは「前の日の夕ごはん」から。そんなイメージです!
準備1:試合前日は主食をしっかり
前日の炭水化物の目安
UEFAの専門家グループの声明では、試合の前日・当日・翌日の炭水化物を、1日に体重1kgあたり6〜8gとしています。
| 体重 | 試合前日の炭水化物(6〜8g/kg) | ごはんに置きかえると |
|---|---|---|
| 30kg | 180〜240g | ごはん約500〜665g分 |
| 35kg | 210〜280g | ごはん約580〜780g分 |
| 40kg | 240〜320g | ごはん約665〜885g分 |
(の体重あたりの値で計算、ごはんは100gあたり36.1gで換算)
ごはんだけでとる必要はありません。パン、めん類、いも、果物、補食も合わせて届けば大丈夫です。
前日の食事の例(体重40kgの子)
| 食事 | 献立 | 炭水化物のめやす |
|---|---|---|
| 朝 | ごはん(200g)・納豆・みそ汁・バナナ1本 | 約95g |
| 昼 | 給食、またはうどん(200g)とおにぎり1個 | 約81g |
| 補食 | カステラ1切れ・オレンジジュース | 約31g+ジュースの分 |
| 夕 | ごはん(250g)・鶏肉の照り焼き・野菜の煮物・オレンジ(100g) | 約101g |
(日本食品標準成分表で、主な食品の値だけをたした目安です)
主な食品だけで約308g。目安の240〜320gに届きます。
ごはん
うどん
食パン
前日の夕食で気をつけたいこと
- 食べ慣れた料理にする(新しい料理は試合のあとに)
- 揚げ物より、焼く・煮る料理を中心にすると、ごはんがたくさん入る
- 生ものは避ける:刺身や生卵、生焼けの肉は試合前は避けます
- 早く寝る:ためた燃料と体力を、睡眠で整えます
準備2:試合当日の食べ方
キックオフの3〜4時間前に食事
UEFAの声明では、キックオフの3〜4時間前に、体重1kgあたり1〜3gの炭水化物の多い食事をとることをすすめています。
| 体重 | キックオフ3〜4時間前の炭水化物 | 例 |
|---|---|---|
| 30kg | 30〜90g | おにぎり2個(78.6g) |
| 40kg | 40〜120g | ごはん200g+バナナ1本(93.3g) |
(の体重あたりの値で計算、例は日本食品標準成分表で計算)
脂の多いおかずや、食物繊維の多い料理は、おなかにたまりやすいので、試合前の食事では量を抑えめにする選手もいます。ごはん・おにぎり・うどん・もち・パンなど、消化のよい主食を中心にしましょう。
1〜2時間前に補食
キックオフまでに時間があいて、おなかがすいてきたら、バナナ、カステラ、おにぎりなどの補食をとります。
| 補食 | 炭水化物 |
|---|---|
| バナナ1本(100g) | 21.1g |
| カステラ1切れ(50g) | 31.3g |
| おにぎり1個(100g) | 39.3g |
(日本食品標準成分表で計算)
水分は2〜4時間前から
キックオフの2〜4時間前に、体重1kgあたり5〜7mlの水分をとるのが目安です。体重40kgなら200〜280mlです。尿の色がうすい黄色になっていれば、水分は足りています。
ハーフタイムに炭水化物をひと口
試合中の炭水化物は、ウォーミングアップのあとと、ハーフタイムにとるのが目安です。ハーフタイムにスポーツドリンクを飲む、バナナをひと口食べるだけでも、後半のための燃料になります。ハーフタイムの過ごし方はハーフタイムの補食の記事も参考にしてください。
バナナ
カステラ
おにぎり

朝ごはんはキックオフの3〜4時間前。主食をしっかり食べて、会場へ出発!
長い期間の準備:鉄で「酸素を運ぶ力」を保つ
鉄は持久力の土台
サッカーでは、ダッシュのあと、次のダッシュまでの間に体を回復させる力が大切です。この回復には、血液が全身に酸素を運ぶ力が欠かせません。酸素を運ぶ赤血球のヘモグロビンの材料が鉄です。
鉄が足りないと、酸素を運ぶ力が落ちて、疲れやすくなります。IOCの声明でも、若い選手は鉄をしっかりとることが大切とされています。UEFAの声明では、思春期以降の女子選手がもっとも鉄が不足しやすいとされています。
成長期の鉄の推奨量
| 年齢 | 男子(mg/日) | 女子・月経なし(mg/日) | 女子・月経あり(mg/日) |
|---|---|---|---|
| 8〜9歳 | 7.5 | 8.0 | ― |
| 10〜11歳 | 9.5 | 9.0 | 12.5 |
| 12〜14歳 | 9.0 | 8.0 | 12.5 |
(推奨量。出典:日本人の食事摂取基準2025 p345)
JFA栄養ガイドラインでは、鉄の必要量が多いアスリートは、1日20〜30mgとされています。成長期で運動量の多い子は、推奨量をしっかり満たすことを毎日の目標にしましょう。食事でとるのが基本です。
鉄の多い食品
| 食品と量 | 鉄 |
|---|---|
| 牛もも赤肉 80g | 2.2mg |
| かつお 80g | 1.5mg |
| あさり水煮缶 30g | 9.0mg |
| 納豆 1パック(40g) | 1.3mg |
| 木綿豆腐 1/3丁(100g) | 1.5mg |
| こまつな 80g | 2.2mg |
| ほうれんそう 80g(生の重さ) | 1.6mg |
| 卵 1個(50g) | 0.8mg |
| きな粉 大さじ2(12g) | 0.9mg |
(日本食品標準成分表で計算)
牛もも肉
かつお
あさり缶
鉄をとる工夫
- 赤身の肉や魚を、主菜に週に何回か:牛もも肉の焼き肉、かつおのたたき、まぐろの漬け丼
- 副菜に青菜:こまつなのおひたし、ほうれんそうのごま和え
- 汁物にあさり:あさりのみそ汁、クラムチャウダー
- 果物と一緒に:オレンジやキウイなどビタミンCの多い果物を、鉄の多い料理と一緒にとると、体に吸収されやすくなります
主食・主菜・副菜・牛乳・乳製品・果物の5つをそろえる食事なら、鉄の多い食品も自然と入ります。くわしくはレバー以外で鉄をとる方法を見てください。
こまつな
納豆
オレンジ
鉄を多くとる1日の例(中学1年生)
| 食事 | 献立 | 鉄のめやす |
|---|---|---|
| 朝 | ごはん・納豆1パック・こまつなのみそ汁(こまつな40g) | 約2.6mg |
| 昼 | 給食 | 献立による |
| 補食 | きな粉牛乳(きな粉大さじ2) | 約0.9mg |
| 夕 | ごはん・牛もも肉の焼き肉(80g)・ほうれんそうのおひたし(80g)・あさりのみそ汁(あさり水煮缶30g)・オレンジ | 約13mg |
(日本食品標準成分表で、主な食品の値だけをたした目安です)
あさり缶を使った日は、それだけで推奨量に近づきます。あさりがない日も、赤身の肉と青菜、大豆製品を組み合わせれば、しっかり積み上がります。
試合翌日も、主食をしっかり
試合の翌日も、炭水化物の目安は1日に体重1kgあたり6〜8gです。試合で使った筋肉のグリコーゲンを戻しておくと、次の練習や次の試合で、また最後まで走れます。試合の翌日の朝ごはんも、ごはんやパンをしっかり食べましょう。試合の翌日の過ごし方は試合の次の日の食事でくわしく紹介しています。
よくある質問
Q. 前日にカーボローディングをしたほうがいい?
大人の長い持久競技で使われるような特別なカーボローディングは、子どものサッカーには必要ありません。試合の前日・当日・翌日は、1日に体重1kgあたり6〜8gの炭水化物をとるのが目安です。いつもの食事で、主食を少し多めにすれば十分です。
Q. 試合の朝、緊張して食べられません
おにぎりを小さく握る、バナナやカステラなど食べやすいものにする、2回に分けて食べるなどの工夫があります。前の日の夕食でしっかり食べておけば、朝が少し軽くなっても、燃料はたまっています。
Q. 鉄は、試合の前日にたくさんとれば効きますか?
鉄は、毎日の積み重ねで体にたくわえられる栄養素です。前日だけたくさんとるより、ふだんから毎日とることが大切です。
Q. 走れないのは鉄不足のせいかも、と心配です
疲れやすさが続く、顔色が悪い、練習についていけないなどが気になるときは、医療機関で相談すると、血液検査で確かめられます。
Q. 試合の当日にお肉を食べてもいい?
食べ慣れた料理なら大丈夫です。ただ、試合の前は、主食を中心に、脂の多い料理は試合のあとに回すとおなかが楽です。
子どもへの声かけ
- 「今日のごはんは、明日の後半のためのごはんだよ」
- 「赤身のお肉は、走る力のもと。しっかり食べよう」
- 「ハーフタイムに、ひと口バナナ食べてね」

最後の笛まで走り切る! その力は、前の日のごはんと毎日の鉄から。
まとめ
- 後半に走れなくなるのは、筋肉のグリコーゲンが減ることとつながっている
- 試合の前日・当日は、1日に体重1kgあたり6〜8gの炭水化物
- 当日は、キックオフ3〜4時間前に体重1kgあたり1〜3gの炭水化物
- ハーフタイムに炭水化物をひと口
- 鉄は酸素を運ぶ力の土台。赤身の肉・魚、あさり、青菜、大豆製品で毎日とる
走りを支えるレシピは走り負けないレシピにまとめています。
出典:米国栄養士会・カナダ栄養士会・米国スポーツ医学会「Nutrition and Athletic Performance」(2016)、UEFA エリートサッカーの栄養に関する専門家声明(2021)、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」、IOC 若年競技者に関する合意声明(2015)、日本サッカー協会「JFA栄養ガイドライン」、文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」(出典の一覧は「出典」のページを参照)
